選挙カー。
[ 小さな星日記 ]
うちの地元の小さな町の町議会選挙。
一度だけ、ある候補者の選挙カーの運転のお手伝いをしたことがあります。
別に、バイトとか言うんじゃなくて、小さい頃から近所のおじさんとしてよくしてもらってた方でもありますし、実際今まで僕が知っている議員さんの中で、一番気持ちよく、信頼の出来る方だったということもありました。とにかく毎日毎日、自分から身体を動かして、町中の困ったひとを助け歩いているような方でした。
だけど選挙運動の仕方は、わりと普通、というより、まぁ他の候補者の方とそんなに変わらなかったと思います(笑)。僕としてはドライバーとして、車通りの少ないところでは出来るだけゆっくりと車を運転するのは意外と難しく、それはそれでなかなか気を遣うものでもあるし、町民の方がわりとよく沿道に出て来てご声援下さったりするので、そのタイミングを逃さないように車を止めたり....1時間もやると、けっこう疲れてしまったものです。
誰も歩いてもいないし、さして車も走っていない。
民家もそれぞれ離ればなれにいくつかぱらぱらと建っていて、誰かが出てくるわけでもない。
そのくらいの田舎。
そんな中で、1人、自分の政策、公約をお話しする。
誰も聞いてない、何の効果もないかもしれないけど。
それでも、堂々と気持ちの入った声で、そしてきちんとその声が伝わるように話す。
僕はその時、その人のことお手伝いが出来ることを、とても誇らしく思えました。
でも、何年か前にその方は他界されました。
僕等の父親と同じくらいの世代でしたから、まだまだお若かったと思います。
お葬式の後、最後の最後にお別れをと、ほんとにたくさんの町民がそれぞれ近所の国道に出てお見送りをしてたそうです。そんなに、町民に愛された方だったにもかかわらず、結局町長にはなれずじまいでした。彼に町長になってもらいたかったひとは、たくさんいたはずなのに、なぜなれなかったのか......
あぁ、彼が一度でも町長になってたらなと。
そして、すでにその望みは絶たれてしまったんだなと。
選挙に行くたびに、その人のことを思い出します。
僕にとって、ひとつの希望みたいな、そんな人だったのです。