娘よ。

[ 小さな星日記 ]

遠くで暮らす娘から手紙が来ました。
高校を卒業した、と。
そうか、と僕は少し寂しい思いもしながら、その最後の手紙を読みました。
彼女は僕が16の頃、かなりやんちゃをしてた頃に....って、んなわけはなくて(笑)、この3年間、中国のチベット地方のとある高校生の女の子の里親をしてたんですね。

一年間、8万円。
それで彼女は生活に不自由することなく、勉強できる。父を早くに亡くし、母の掃除の仕事で細々と暮らす彼女の家族。成績のよい彼女が自分の能力を存分にのばして、自分の手で家族や周りの人、そして大袈裟だけどチベット民族の明日を切り開いてくれたらいいなという思いもありました。

でもホントのことをいえば、前にダライラマ亡命政府のあるインドのヒマラヤの小さな町を訪れ、旅の終わりを見つけた話を書いたんですが、その時によくしてもらった、その恩みたいなものを少しでもお返しできたらなと、そのプラスの気持ちを、きちんと回転させたいという思いがあり、3年前にたまたま縁あって、ある基金を通じてこの女の子の里親になりました。

時々彼女は手紙をくれました。
学校の話、家族の話、そして毎回僕にとても感謝していると書いてくれました。僕は勉強だけでなく、友達と遊んだり話をしたり、恋をしたり、もう少しリラックスして楽しい学生生活を送ってくれたらいいな、と思っていました。
まぁ、日本と中国。
根本的な学生生活の違いも大きいのかもしれませんけど。

去年の夏にくれた、彼女の手紙。
こんな内容のことが書かれていました。

「絶対に頑張るぞ!」それが私の唯一の道なのです。
成功は準備する人に与えられます。私は自分の基礎を築くために、努力して準備します。そうしてこそ私は臨機に人生の途を選択し、その途を輝かせるのではないでしょうか?
okayan先生、成功のもっとも大切な点はなんでしょうか。
教えて下さいませんか?
貴方が幼い頃はいかがでしたでしょう?私には貴方のような資格がないのかも?
(中略)
教師はこう言いました。
「新時代の学生は、学習だけでなく各方面で優秀でなければならない。社会は優秀な人材を多く求めているのです。」
okayan先生もそう思われますか?
貴方は成功なさった方ですね!
おそらくそのために努力なさったことでしょう。
(以下略)

僕等はお店を始めたばかりでした。
お客さんはまだちょっぴり。給料だって、ほんのちょっぴり(笑)。
僕は成功した方なのか?
そんなことはないよね。
僕も彼女と同じ、努力して準備しているヒトなんだろうなと。

そのことを彼女に伝えてあげればヨカッタ。
日々の忙しさに言い訳と、根っからの筆無精。

突然もらった彼女からの最後の手紙。
そのことをなぜ彼女に伝えてあげなかったんだろうと。
出来の悪いお父さんでごめんねと、彼女に謝りたい気持ちでいっぱいになりました。

それでも彼女とその家族、チベットの人たちのこれからに幸多かれと、遠くここから祈っています。そしていつかあなたもプラスのバトンを誰かに渡してくれたら、とてもうれしいなと。

日本で小さなお店をやっている、
父より。

 
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