球に近い多面体。
[ 小さな星日記 ]
彼女と出会ったのは、カンボジアのプノンペン空港。
当時は陸路海路共にキケンだったために、飛行機でタイからカンボジアに入国、プノンペン空港でビザを取ってイミグレを抜けたら、さて、街中までどうやって行きますか....と、同じエアカンボジアに乗ってきた日本人が二人。ひとりは30代半ばと思われる、ビジネスなのか観光なのかよくわからない風情の男性、それから彼女。
僕らはタクシーをシェアしてプノンペン市内中心部に。シェアしたついでに同じ安宿に部屋をとり、ひとまずごはんでもたべましょうかと、近くの食堂でビールなんかのみながらお互いの話なぞする...ってのは、僕らみたいな個人旅行者にはごく当たり前の出会い方。
彼女の旅はまだはじまったばかりで、とにかく元気で、精力的に動き回り、体験し、そして感じていく。僕はといえば、旅の終わりをみつけた後のおまけ旅、長旅の疲れもあるしのんびりマイペースでいけばいいさというような、えぇ、典型的な長期旅行者の気怠さで(苦笑)、彼女にいつも呆れられたりしたけれど、それはそれでいいのだ(笑.....その後彼女は旅先から、あのときのokayanの旅の仕方、今はよくわかるよと手紙をくれたこともあったね)。
特に美人というわけではないけれど、まん丸くて人なつっこい笑顔、にっこりすると目がなくなって、彼女は若くて健康でとてもかわいらしい女の子だったし、ヘンに女性であることを意識させることもなく気楽に話も出来たしバカな話もたくさん出来た。でもそれだけじゃない、ダイナミックな力強さとしなやかなバネがその小さな身体にぎゅっとつまってて、これからどこへと旅していくのか、全然見当がつかない....危うさこそ、かんじなかったけれど...そんな風に思ってた。
好奇心がぎゅっとつまった小さなゴムまり。
ゴムまり....いや、まん丸じゃなくて、球に近い多面体。
なにかに触れた瞬間に、今までの軌跡から考えられないような方向へジャンプする、そんな球に近い多面体。まさに彼女はそんなかんじだった。常に直感に素直、こうと思えばなりふり構わない。そうやって、いろんな国、ヒト、そして恋と、僕らが呆れるくらいに彼女はストレートに人生をばく進する....それはとても痛快で、そして眩しかったりもするんだけれど....ホントに呆れちゃうくらいにね(笑)。
そんな彼女もひとつの落ち着ける相手を見つけた。
それは安らぎの場所を見つけたというのとはちょっと違う。彼女は彼女、あいかわらず好奇心のつまった球に近い多面体。その彼女がいっしょに寄り添いながら、いっしょに弾んでいける相手を見つけたんだろう、きっと、そうなんだろう。
彼女と彼は出会ったタイの小さな町で、この週末、結婚する。
彼女があの頃と同じように、今でもかわらず弾み続けているのを、僕らも最高にココロ弾ませながら祝福してこようと思っています。
というわけで、一週間、お暇いただきます。