去年のホワイト・ディに口説いたのは.....

[ 小さな星日記 ]

去年のホワイト・ディ。
お店はバレンタインに続いて定休日で、締め切りギリギリなんとか仕上げた確定申告の書類を武蔵野税務署の夜間ポストに放り込んで、僕は新宿に出かけました。そして音楽機材を大人買いしたりするわけなんですが、えぇ、ほんとうの目的は別のところにありました。

去年の3月初旬。
店長ミヤザキに、料理長、フカザワに僕のオーナー4人は確定申告のことも含めミーティングをしました。そこでハッキリと料理長は自らの引退の意を僕らに伝えました。
まぁ確かにそりゃそうですよ。
オープンしてから9ヶ月。
僕らとほとんどかわらない酷い労働条件の中、そして僕ら素人をその料理の腕でなんとか支えてきてくれたわけで、やっぱりそりゃ肉体的にも精神的にも疲労困憊だったろうと、だから僕らもそれを受け入れざるを得なかったし、でもそろそろ春になりつつ、お客さんもちょっとづつ増つつ、やっぱり料理長のかわりになる誰かを雇わざるを得ない....3人でやってくわけにはいかないわけです.....じゃ、それって誰よ?

誰なのよ?

うーん。
本格的に料理やってるような人が来てくれても、うちの素人さんみたいな素朴なやり方に逆にイライラしそうですし、やる気がある若い人なんかいいけれども、でも包丁を握るところからイチから教えなくちゃならないのもちょっと困るし....と、僕らは僕らといっしょに働く新しい料理人をうまく想像することができませんでしたし、それはその時の僕らにとって、とても不安なことでした.....いずれにしても、料理長を失うことはすでに決定していたわけですから。

新宿であらかた自分の音楽機材を買ったあと、僕は店長ミヤザキと合流。
ミヤザキの隣にいたのは、ヒデキ。

僕らはちょうどフリーになっていた、ミヤザキの高校からの友人、アルバイト&社員、ホール&キッチンあわせて10年以上の飲食のキャリアを持つヒデキといっしょに仕事ができないものかと、その日ミヤザキがまずは直接口説いたわけです.....労働条件も金銭的な条件も全然いいとは言い難いけれど、きっとうちは面白いよ、なんていうとても説得力の薄いことしか僕には言えなかったわけですが、それでもヒデキは僕らと働くことを快諾してくれたのであります。

それから一年。
閉店後に僕らはくだらないおしゃべりなんかしつつ、洗い物をしたり....でもまだ4人でやってた頃は、そんな冗談も言えないくらいコテンパンに疲れ果ててたし、実際ヒデキが来てくれたおかげでそれまでより1時間以上も早く帰宅できるようになった。

夜うちに帰ってからできるだけ3時までは起きてるようにしてるんですよ、なんか自分のことやろうと思って、とヒデキは言う。だいたい僕なんか帰ったら疲れてコテンと寝てしまうんだけれど、そうか、と僕も思う。ヒデキが来てくれた分、早く帰れて....それでその分寝てちゃ仕方ないよなと、ちょっと反省(苦笑)。

ヒデキがあの頃の僕らに与えてくれたもの本当の意味を、僕は今ようやく実感してきてるのかもしれない.....鈍感で申し訳ないね>ヒデキ(苦笑)。

きっとこれからもこの時期には
そんなことを、ちょっと思ったりするんだろう。
閉店後に、洗い物なんかしながら。

 
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