ある光。

[ 小さな星日記 ]

昨日テレビのニュース番組で、亡くなったジャーナリスト長井健司さんがミャンマーで撮影したというビデオを見ました。そこに映った首都ヤンゴンは.....僕が訪れた時と同じような、コントラストと彩度の高い、仏教を重んじる南国の都市.....あのみずみずしい空気感が懐かしくもあり、もどかしくもあり。

96年の5月、僕はインドのカルカッタ(現・コルカタ)から空路でヤンゴンに入った。
街の真ん中に大きな金色の寺院があって、そこを中心に東西南北に大通りがあって.....とてもわかりやすくて、地図なんかほとんど出さなくてもぶらぶら歩き回ることができた。その年、ミャンマーは軍事政権下、初の観光年ということで....だからヨソの国に比べたら人も穏やかで、ぎすぎすしてなくて素朴で、女の人は美人揃い.....とてもよかった(笑)。外貨獲得のための強制両替と.....二重レート(闇チェンの方が数十倍もレートがよかった)はいただけなかったけれど。

僕は毎日ぶらぶらと街を歩きながら、ちょっと覚えたミャンマー語で....おしゃべり出来るほどではないけど...お店をひやかしたり、挨拶するのが楽しくて、つかれたら街の中心の大きな金色のお寺で電飾でビカビカに飾られた仏像の前に座ってみたりした。

週末、郊外にあるアウンサン・スー・チーさんの家の前で彼女の演説会があると聞いて、土曜日にタクシーで行ってみると....スー・チーさん家の門の前はすでに黒山の人だかり、まだ軟禁状態ではあったけれど、門の向こう側、高い台の上に現れたスー・チーさん.....ホントに綺麗で、清々しくて、毅然として....でも茶目っ気もあって、聴衆みんなが、男も女もワタクシも目をハートにして彼女の一挙手一投足を見逃さない.....くらい熱い眼差しで見守っているのでした。
英語でのスピーチは....さすがに内容までは覚えてないし、政治的な単語がたくさん出てきて、ちっとも理解できなかったんだろうけど(苦笑)、聴衆を含め、あんまり素晴らしい演説会だったので、調子に乗って翌日の日曜日も行ってみる.....と、今度はミャンマー語のみのスピーチでした(苦笑)。もちろんちっともわからなくて.....近くのおばちゃんに.....あんた、ミャンマー語わかるの?と日本語でつっこまれました....そのおばちゃん、前に日本に出稼ぎに来てたんだって。それでも.....やっぱり前日同様、スー・チーさんはすばらしくて、こうして彼女を見ることが出来てよかったなと、いい旅の思い出になったのでした。

そんな政治家がいるということ。

今は.....軟禁の身ではあるけれど、ミャンマーの人達が、みんなスー・チーさんを信じている....彼女が国の舵取りをしてくれれば、絶対にミャンマーはうまくいくと.....そう信じている。その信じる力の真っ直ぐさ、そんな.....光があること。

日本の政治を鑑みた時、それはとてもうらやましいことだなと思ったものでした。

僕がミャンマーに滞在してた時も.....日本の新聞では「ミャンマー、あやうし!」的な報道があったようで....でも地元の人は....こんなの大丈夫だよ、ホントにあぶない時は、ホントにヤバイ雰囲気になるものだよと.....ま、結局その時は何事もなかったわけですが。

でも今回はホントにあぶない.....本気なんだなと、あれから11年、こんなに時間はかかったけれど、あの光をミャンマーの人達は本気で取りにいこうとしているんだなと.....

事態が平和裡に、
今度こそ望ましいかたちで収束しますように。

そう祈らないではいられません。

 
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