第15話

テープ起こしをする。

インタビュー原稿を書く時に必要になるのが、テープ起こしという作業です。録音したインタビューを少しずつ聴き直しながら、その内容を文字に書き起こしていく。今はICレコーダーがほとんどですが、昔はカセットテープレコーダーを使っていたので、業界ではテープ起こしと呼ばれています。

テープ起こしは、とてつもなく地味で、単調で、根気のいる作業です。ある程度の慣れも必要で、普通の人がやろうとすると、ほんの30分ほどのインタビューをテープ起こしするだけでも、ものすごく時間がかかってしまって、「あーもう、やってらんねー!」と叫びたくなると思います(笑)。「いっそ、音声認識ソフトで一気にテキストに変換できれば楽なのに!」と巷ではよく言われているのですが、そういうソフトも、技術的にはまだ仕事で使えるレベルには到達していないようです。

でも、もし一言一句を忠実に変換してくれる音声認識ソフトが開発されたとしても、それをそのまま原稿として使うことはできません。というのも、人間の話し言葉というのは、そのまま忠実に文字に置き換えても、読みやすい文章にならないことがほとんどなのです。だからインタビュー原稿を書く時は、話し言葉の意味やニュアンスをしっかりと捉えつつ、文章としても読みやすい言葉に微妙に変換していかなければなりません。その微妙な変換作業の精度とスピードが、ライターの腕の見せどころになります。

テープ起こしのやり方はライターによってもさまざまで、最初はできるだけ忠実に書き起こしてから構成や文体を整えていくという人もいます。どのような体裁の原稿を書くかにもよりますが、僕は基本的に、テープ起こし作業はあまりあてにしません。一番大事なのは、取材時の記憶と、取材ノート。まずは取材ノートを読み返しながら、印象的だったエピソードやキーワードを確認し、原稿の組み立てを考えていきます。テープ起こしは、そうして練り上げた構成の裏付けと肉付けのための作業です。先に構成が決まっていれば、テープ起こしをする時も迷わずに済むので、より効率的に進められるのです。

‥‥まあ、そうは言っても、23時間分の録音データを聴き直すというのは、なかなかしんどかったです。ミヤザキさんもokayanも、話しっぷりが至極ざっくばらんなので、話題があっちに飛んだり、こっちに戻ったり、もう大変(苦笑)。でも、こういう地味な作業を積み重ねていかないと、ちゃんとしたクオリティの原稿を書くことはできません。毎日々々、亀のごとき歩みで、僕はテープ起こし作業を続けました。

(yama_taka)

 
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