草稿を書く。
取材ノートを基に構成を練り、テープ起こしで確認した内容を基にそれを調整した後、僕は本文の草稿を書きはじめました。草稿、つまり原稿の下書きです。
僕の場合、雑誌のインタビュー記事など尺の短いものを書く時は、草稿といっても九割くらいの完成度を目指すつもりで書いていきます。どういう書き出しで始めて、どういう展開をして、どういう結論で締めるか、構成を練っている段階でほぼイメージが見えているからです。草稿の執筆は、そのイメージと実際の文章とをすり合わせる作業といえるかもしれません。
しかしリトスタ本のように、膨大な量のインタビューを基にした尺の長い原稿の場合、草稿の段階でキメキメで書き過ぎるのは危険なのではないか、と僕は考えました。今回のインタビューでミヤザキさんとokayanが話してくれた内容は、実に多岐にわたっています。その中には、僕が言葉通り受け取った内容と、彼らが伝えたかったニュアンスとが微妙にずれていたり、言葉が足りていなかったりする部分が出てくるに違いありません。最初から一言一句までキメキメで書き過ぎると、あとから二人の意向を反映させようとしても、修正が非常に難しくなるのです。
そこで僕は、草稿の段階ではあえて目標とする完成度を低めに設定することにしました。六、七割くらいの完成度で書いてみることにしたのです。
六、七割といっても、いい加減な文章を書くというわけではありません。基本となる構成はきっちりと組み上げつつ、文体はすらすらと読めるようなフラットな感じにして、細部まであまり決め込まないようにする。入れようかどうしようか迷っている細かい情報については、とりあえず入れておく。こうすれば、ミヤザキさんたちが草稿を読んで修正指示をたくさん入れても、それらを反映させるのは比較的簡単になります。その後で、無駄な部分をそぎ落とし、一言一句まで厳密に検証して完成度を高めていけばいいわけです。
何もないところから一文字ずつ草稿を書いていくのは、本当に気が遠くなるような作業です。4月の初め頃から文体などを検証しつつ書きはじめて、最後まで到達したのは、7月の初め。「ラダックの風息」を書いた時の半分くらいの期間ですし、他の仕事もこなしながらの執筆だったので、僕にしてはかなりの超特急の作業でした。
で、ある程度書き上げたそばからミヤザキさんに渡していた草稿は、赤ボールペンで書かれた修正指示で真っ赤に染め上げられて、僕の手元に戻ってきました(笑)。さて、これからが正念場です。
(yama_taka)